構造用接着剤

車体剛性強化による走行安定性の向上を実現し、デザイン性向上や軽量化検討できるアイテムとして大きな影響を与えた 自動車用 構造用接着剤

化成品技術部/服部和男

構造用接着剤とはどのような製品ですか?

自動車のボディは数多くの鋼板をスポット溶接で接合しています。当社が開発した構造用接着剤は、その接合部分をスポット溶接と併用接合(ウエルドボンド工法)することができ、破壊に対する強度に優れた接着剤です。主成分にエポキシ系樹脂を使用することにより高い接着性能と耐久性を付与し、自動車の生産ライン(塗装工程の焼付け炉)で固まるよう工夫しています。

従来品ではどのような課題がありましたか?

車体剛性を向上する一般的手法として、補強板の組付けや鋼材を厚くする、もしくは鋼材強度の高いものを使用することが挙げられます。前者は車体重量が増加しますし、後者は複雑な鋼材加工をすることができず設計自由度が低下します。

構造用接着剤はどのようなメリットがありますか?

車体接合部をスポット溶接のみの点接合ではなく接着剤を併用した面接合とすることで、車体剛性が増大し走行安定性が高まります。また接着剤の適用により十分な車体剛性強度が得られている場合は、鋼板の厚みを薄くする(軽量化)ことも可能となります。

製品化に対し、どのような工夫をしましたか?

自動車向けの構造用接着剤は高い接着強度と疲労特性が、また寒冷地や塩害地など過酷な環境下で劣化しない信頼性が求められます。これらを満足するために試作・評価を繰返し行い、全ての条件をバランスよく満たす製品を開発しました。また得意先の自動車生産ライン(車体溶接工程)での塗布作業性にも配慮し、使いやすい製品になるよう調整しています。

将来的な展望は?

当社では、さらに自動車構造用として、多様な接着剤開発を進めています。 現行品と同等以上の接着強度を維持しながら、車体衝撃時に接合部の破損防止できる耐衝撃性接着剤や、車体構造部への拡大が予想されるアルミ部材や樹脂部材への接着に適用できる製品の開発を行っています。
今後自動車における接着剤の活用範囲はどんどん広がっていくと考えられ、より多くのニーズに応えることができるよう製品開発に努めています。

【目的に応じた製品ラインナップ】

構造用接着剤は車体剛性強化の目的以外にも適用部位に合わせた製品を取り揃えています。その製品のひとつとして、タイヤのホイールアーチ部への適用製品が挙げられます。この接合部位は従来のスポット溶接接合から接着接合とすることによりフランジ端部を短く設定できるため、車体のデザイン性向上に貢献できます。

スポット溶接より接合の自由度が高いため、デザインにも貢献